大雲好日日記-236 「法隆寺再訪」

法隆寺再訪(令和6年3月30日)

 

昨年の秋に法隆寺を訪れる機会があった。

秋晴れの行楽日和だったが、

その日は少し暑いくらいで、汗ばむ陽気であった。

 

ちょうどその頃は修学旅行のシーズンと重なり、

次から次へ修学旅行生がやってくるものだから、

静かに諸仏と対面することは残念ながらかなわなかった。

 

しかし境内には人気のあまりない森閑としたところもあり、

その一つは、案内してくれた人が教えてくれたのだが、

五重塔がもっとも美しく見えるビューポイントの辺り(写真)、

そこは人もまばらで松の大樹がつくる蔭が涼しかった。

 

法隆寺五重塔

 

そこには会津八一の歌碑が立っていて、石にはつぎのように刻まれていた。

 

ちとせ あまり みたび めぐれる ももとせを

ひとひの ごとく たてる この たふ 

 

(千三百年という長い歳月を経過して しかもそれがまるで 

一日であるかのように立っている この法隆寺の塔)

 

八一がこの歌をどの場所で詠んだのか定かではないが、

わたしにはやはりあのビューポイント辺りだと想像された。

 

なぜかといえば、そこに立って五重塔を見上げると、

確かに、その塔が過去の遺物にすぎないことを拒絶して、

厳然と現在しているように見えたからである。

 

八一はその時、

五重塔を単に過去の遺産として仰望したのではない。

五重塔が自分と同時代に在ることを強く感じたのであろう。

そして悠久の時に自らの心を遊ばせたのである。

 

わたしにとって二度目となる法隆寺の拝観は、

このように新しい発見の小旅行でもあった。

 

 

 

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